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96号　泉論文を読んで

小平　邦紀（兵70期）

泉五郎氏の｢��國問題を考える｣等の長編は、読み応えがあり、作者各位の思いや見解に学ぶところや感銘深い点など・・大変勉強になりました。

菅原　　完（兵77期）

泉五郎様の「��國のことを考える」は、今まで頭の中でモヤモヤしていたことが消散し、目からうろこが落ちたような気がしました。有り難うございました。

上野　三郎（機）

一　何故自己矛盾か

　我々も、泉君も太平洋戦争中、海軍軍人として戦闘に従事し、多くの部下を戦死させた。軍は一体的上下組織で、命令に従わなければ戦争は出来ない。泉論文は結果責任として上級者の判断を批判しているが、我々も下級者から見れば批判される立場にある。我々は中立者、宇宙人ではないのだ。

　結果責任で批判するなら、この大戦が何故起こったかを考えてみたらよい。

　明治維新、日清・日露戦争、満州事変、支那事変そして太平洋戦争と、一連の戦争を誰が止められたか。山本五十六大将、米内光政大将や当時の海軍大臣も止めることはできなかった。米英の戦力、技術力、物量は在外武官としてよく承知された名将でもだ。

　それぞれ戦争の原因はあった。我々も、満州事変、支那事変はよく知っていたし、やがて米国との決戦を予測して海軍の学校に入学した。戦争反対は恐らく軍学校合格者の中に一人もなかっただろうし、もし生命かけて反対しても止められなかったであろう。

　戦争はその様にして起こるもので、特定の指導者の開戦責任に帰することは出来ない。一体誰が責任者と判定出来るのか。負けると分かって戦争を起こす者はいない筈(はず)。従って結果論での戦争責任者の選定は無理がある。

二　��國問題

��國問題は、中韓がらみで大きくなった。特定のマスコミがこれを扇動した。加えて、昭和天皇時代の宮内庁長官宮田朝彦氏が自分の死の前に天皇のお言葉のメモを焼却せず、死後マスコミに公開して大論争となり、日本外交の阻害要因となった。戦後、象徴天皇となられ、御高齢で病に冒された天皇のＡ級戦犯の一語が大きく取り上げられた。高齢で病になれば、正常な判断が出来なくなるのは、老人病学、癌病理の常識である。この件は、一にかかって、元侍従長の責任にかかっている。（公開した家族の非常識、無責任も大きい。）

　かくして、国益が損なわれ、中韓を利し、老齢で正常判断が出来なくなることへの理解の少ない国民をも大きく判断を誤らせた。

三　��國のあり方

　泉論文では、��國のあり方に深く切り込んでいるが、我々も祀(まつ)られるべきであった歴史のある��國の問題を、国民の最大な関心事を、そんなに簡単に論断出来るのか。独断的論調で理解出来ない。��國は、日本人の歴史的な心の深層心理と神にかかわる問題である。

　ここでも又、Ａ級戦犯なる話が出てくるが、泉論文は各所で論旨のぶれがあり、誤解を生み易く、部分取りで中韓を利して、国益を損なうのみでなく、大方の国民の反論をかうのではないか。

四　松平永芳宮司への批判

松平永芳氏は我々機関学校時代の教官で頭脳明晰(せき)、明朗、闊(かっ)達、英国紳士的スポーツマンで、決して狂信的忠君主義者ではなかった。論文にある東大文学部教授、平泉澄光先生からは二回ほど熊本の菊池一族の忠義の話を聞いたが、冷静に南北朝時代の忠勤の事実を諄々(じゅんじゅん)と大学の講義のごとく説かれた。論文の記述は誤解憶測そのものであるといえよう。

このような論述は恐らく新聞記事からのものであろうが、平泉教授、松平宮司の人柄を損なうもので、両氏の人柄をよく知る我々としては、深く抗議する。人柄、人間性の批判は実態を知る人の多くに面談して、慎重に扱うのが当然であろう。

名表送付等の記述は我々も新聞で見ており、それが事実であるかどうか・・・

ここの論述、担当者の行動等も新聞記事の丸写しで、一体何処までが事実なのか疑念がある。即ち、一方的な資料のみで、別の見方の資料は無い。批判は、もっと複数の資料をもとに推論するのが常識で、論文からは、すべて事実として受け取られよう。断定的で誤解を生むのではないか。歴史的な事実の批判は、自分自身が歩いて、記述の十倍も百倍もの調査をし、関係者にヒアリングして、慎重のうえにも慎重に推論して記述すべきものであろう。

わが国の政治、外交にかかわるものだけになおさらであろう。

野崎　貞雄

��國問題と松平元宮司

なにわ会ニュース第95号（平成18年９月15日）に泉五郎君が「��國問題を考える」を発表されたが、これは「戦争責任問題」と併せて、今や国民的大問題となっている。この大問題に同君が真正面から取り組んで発表されたことは、その意気は誠に盛んでそのファイトには敬意を表します。

然し大問題なるが故に、著名な政治家、学者、或はジャーナリストが喧々諤々(けんけんがくがく)の論議を戦わせても未だ国民的合意が得られていないのが現状です。

この大問題と松平元宮司及び平泉博士を結びつけて、ご両者を非難するのは余りにも短絡、独善的で、とても納得出来ません。

Ｐ114の３段．今日禍根の決定的な元凶は彼である。

Ｐ115の３段．彼らの所業は・・・国家国民に対する許すべからざる人道上の犯罪行為であると言わざるを得ない。

この記述は非礼極まるもので全く遺憾千万である。吾(ご)人が尊敬する大先輩を恰も犯罪人集団の元凶であるかの如く罵(ば)倒するのは許せない。

泉君は甚だしい錯誤を犯しているのではないか。

即ち、��國問題は純然たる国内問題であるにも拘らず、中国、韓国の無礼な内政干渉の結果生起したものである。この両国こそが元凶である。

Ａ級戦犯は国内法では存在しない。

戦争責任者の合祀(し)は全く別問題である。

先輩であろうと、上官であろうと、己の信念を主張するのは当然で遠慮する必要は全くない。然しそこには自ずと「けじめ」が必要です。

我々は朝に夕に軍人勅諭を奉読して来た。

「一、軍人は礼儀を正しくすべし」

軍人を社会人に置き換えて、そのまま立派に通用すると思います。

我々53期は故松平教官の遺徳を偲び、ひたすらそのご冥福を祈っております。

左近允尚敏

よく勉強され知的議論の材料を提供されたことを歓迎します。いくつか私見を述べます。

・中国が横車を押し、国内でも議論が盛んな今、合祀反対を主張されると「政治外交にやることが甚だ卑しい」中国の尻馬に乗ったと言われてもいたし方ないでしょう。合祀から中国が文句を言い出すまでの間で問題提起されたらベターだったと思いました。

・クラス、コレスを含め戦没者は「あまりにも不幸」、「非業の死を遂げた」とみるのは一つの見方でしょうが「その（非業の死を遂げた戦没者の）犠牲によってこそ今日の平和と繁栄、・・・」には首をひねりました。

・極東裁判が茶番劇、報復裁判ならＡ級戦犯の存在を認めてはならないはずです。Ａ級戦犯について大いに論じておいでなのですから、極東裁判の存在と意義を認めていることになります。

･「Ａ級戦犯は罪科の汚名のもとに殺された」とあるのは「一度や二度の切腹では許されぬ」と整合しません。「罪科の汚名」はいわれのない罪という意味でしょうから。

・ポツダム宣言に基づき戦犯にされた人たち（Ｂ級、Ｃ級を含む）は「生きて虜囚の辱めを受けた」と断ずるにはおかしいと思います。

・「一億総懺悔」は８月15日の昭和天皇ではなく。８月28日に久邇宮首相が記者会見で言われたことです。

・日本は無条件降伏したのではなく条件付降伏だったと小生は思っていますが、理由は別の機会に譲ります。

・戦争責任の追及は今なお多くの人が声高に叫ぶテーマですが、おっしゃるとおり裁けるような法律はありません。いったい誰が誰をどうやって追及できるのか疑問です。そんなことはできるはずがないと小生は考えていますが。「個々の戦闘における戦術的な敗戦の追及」には驚きました。コメントは多くの人がしていますが。

・「��國神社に主体性がない」と「決定的元凶は松平宮司」は矛盾しています。宮司は主体性があったから合祀を決めたのではないでしょうか。

･Ａ級戦犯はこれが日本としてとらざるを得ない道だと思って開戦に踏み切ったのですから、小生は極悪人とは思っていません。

･合祀のために動いた人たちについて「国家国民に対する許すべからざる人道上の犯罪行為」にも驚きました。人道上の犯罪行為の意味もよく分かりませんが。

・「革命は常に前政権の責任をあくまで追求しようとするのが歴史の常である」は、気になる記述の一つです。

・このくらいにしておきますが「老後を持て余すほどの幸せ！」だそうで何よりです。また論戦を挑んで下さい。

樋口　　直

泉論文に対する上野三郎（機）の反論、興味深く読ませて頂きました。この種の考え方にたいしては、ひと、夫々の考え方 があり、夫々の立場で意見を言い出せば、それこそ百家争鳴、テンヤワンヤの論争になること必定です。

泉君の立場は、同じ太平洋戦争に参加した生き残りの一員として、戦死者に対しごく素朴な哀悼の意と鎮魂の心情を率直に述べており、その肉づけとして、最近、喧(やかま)しい、Ａ級戦犯の刑死者を合祀した問題を取り上げ、本来の��國神社の在り方とは異なる点を衝いているものと思われ、この疑問点の多い合祀問題を実行した当事者を最近の中国、韓国のわが国にたいするクレームの原因と断じ、日本の最高責任者の神社参拝を違憲とし内政干渉とも思われる言動に反論しているものと解釈します。

平泉教授や松平宮司の個人弾劾をしているわけではないでしょう。ただその実行者として名指しで捉えているものと思われます。勿(もち)論上野君のように平泉、松平両氏を個人的にも、またその思想、論旨もさらにはその人柄まで承知のうえで批判しているわけではありますまい。その意味では両氏をかく責めるのは行き過ぎで、両氏をよく知りその人物に傾倒している者から見れば真に我慢のならぬ事と思われます。

一方、泉君その者をよく知っている我々から見れば、この論文は如何にも、泉君らしい論調で、其の事実の検証を行ったか否かを云々するよりも、其の結論に共鳴するものです。上野君も若し泉君の人柄や性癖をよく知っていれば、又違った解釈をしたかもしれません。即ち、��國神社とは護国のために戦場で鬼となられた軍神の帰趨(すう)し安眠される象徴の場所であり、我々も出撃に際しては「次は九段で、��國神社で会おうぜ」といって決別したものでした。　　　戦場でもなく敵と直接、戦った訳でもなく、恥ずかしながら、敵の手によって、無理やり敵に対しての責任を執らされ、詰め腹を切らされた方々を合祀するのが国民感情に果たして合致するのか。彼らが果たして敗戦の責任を国民にたいしてとったのか？

��國神社との関係には多々疑問無しとせず、未だに敗戦責任についての論議（国民に対する責任）がなされず、戦争責任論がウヤムヤにされている現状においておやです。また、国際問題については、論議のどの点について国際的に日本が理不尽と決め付けられるのか？　一寸意味がはっきりしません。

中国や韓国が日本の世論を分断しようとしている謀略としか考えられぬ中傷に阿(おもね)ることこそ国益に反するように思われます。

結論的に短絡していえば、Ａ級戦犯は��國神社に祭るには相応しくないとして、除籍すべきで、それでも、国民の世論がこれらの方々を顕彰しようというのなら、別に然るべき祭りどころを設けるのが適当ではないでしょうか？

窪添　龍輝

泉論文は、泉氏の個人的な見解を述べたもので，全海軍士官はもとよりなにわ会の統一見解ではない。このことは、会誌の性格から言って当然のことである。賛成、反対、疑念いろいろあると思う。反対意見は、上野氏の了解が得られれば、是非、次号に掲載してもらいたい。

守家　友義

　「��國問題を考える」を読み、感じ入りました。１５項目に亘る論旨は、小生がわが子等に口伝えせんとして、言葉にならず、書き残さんとして文章にならざるところを言いえて、筆者の思想と文筆の冴えに改めて敬意を表する次第です。小生節々の痛みに耐えて元気です。

藤野ひろ子（竜弥の妻）

��國問題を考える泉五郎様の長文には感服させられ、本当に勉強になりました。

なにわ会ニュースご送付までにどんなにご苦労なさったか、ただ感謝するのみでございます。

岩松　重裕

泉　五郎兄の「��國問題を考える」に感銘しました。かねがね考えさせられていたこの問題に的確な回答を与えてくれました。毎年の��國神社参拝が気持ちよく出来るよう、��國神社自らの改革が早からんことを願うばかりです。

竹内あい子（茂の妻)

泉五郎様の｢��國問題を考える｣はかねて、私はこのところ、首相の参拝がかまびすしい��國問題をどのように考えたらよいか悩んでおりましたので、明快なお答えを頂いたように思われ、嬉しゅうございました。

（編集部）

人間80歳を超え、終戦後の辿った道はいろいろで、会員の考え、思想もまちまちです。編集担当としては、会員の投稿は原則としてそのまま掲載する方針でやっています。頂いた原稿には記憶間違いも時々見受けられますが、気付いたときは注で補足しています。内容について論議することは、もう知力、体力の限度を越えています。

校正は４名の方にお願いしていますが、内容の適否ではなく、誤字脱字について意見を頂いています。内容の責任は投稿された方にとって貰うほかありません。

なお、今回の泉論文は印刷直前に頂いたので、メールで校正を御願いできる３君にみてもらい、佐丸幹男君には見て頂く時間が無かったことを追記しておきます。