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なにわ会のブログ 八雲行脚

海軍兵学校72期が昭和18年9月15日卒業してから2月間
艦務実習した時実習幹部が書いた記事である。

昭和18916

中林正彦 

 1 主計少尉候補生の紹介行われ、主計少尉候補生が軍装を着変える暇もなく、汚れたる軍装にて行う如く余儀なくされたことを「コレス」の一人として同情す。

2 庶務主任の紹介は一風なり。

3 主任指導官の関係法規の説明は指導官の体験を基にして説明された。面白く興味ありて極めて有効なり。

 

917

中林正彦

乗員を有効且適切に動かすは至難の業なり。

 

和田恭三

 1 実務3日目にして黄海海戦記念日を迎え、また、山城に候補生一同集まりて司令官より訓示を受け益々決意を固めたり。今日を以て準備教育も終る。明日よりは最も積極的に明朗に実務を演練せんとす。

 2 分隊に配属されて我らも部下を持つことになったり。本週は眞の分隊士となりたる気分にて分隊員を指導し統率の訓練となさん。

 3 艦内の暑さにはいささか閉口せり。然しながら主任指導官より南洋のことを思えと言われれば何時までもこの気持では居られず。暑いことには種々工夫してそれに対するよう心掛けざるべからず。

 

9月18

藤範純二  

 1 主任指導官より整理につてのお話を承りたり。之吾人の常々感ずる所にして而も翼実行し居らず。吾人は指導官よりのご注意は些細な事柄と雖も即時実行に移すべく、実務練習中に此の点特に留意努力せん。

 2 副直将校勤務等実施せんとする前は甚だ自信なく感じたるも為せば出来るの感を深くす。

 3 研究と工夫と言う事極めて大切なり。

 

藤範純二

 1 短艇訓練に於いて近来達着訓練をなさざりし故か達着極めて拙し。益々平素の実力発揮すべきなり。

 2 副直勤務に於いては乗艦実習と異なり事前の準備と相俟って得るところ極めて多し。

 

919

藤範純二  

 1 一見は百聞に如かず。台風襲来の兆あり。荒天準備作業を実施、見学得るところ大なり。空理空論に奔る勿れ。艦内を歩け。作業、兵員の挙動を見よ。

 2 副直将校の作業の達し方、元気、気迫、明確なること必要。指揮者の号令にて兵員の動作、敏活緩慢を左右するなり。

 3 作業の実施に当たり兵員は極めて喧騒なり。迅速、確実、静粛の3項目は作業実施の要諦なり。此の理由を考える未だ兵員は作業に慣熟せず無駄口多く而も少人数でなし得る作業を多数の者が手を出し作業を混乱せしメールにあり。指揮官とし、日頃兵員に対する教育訓練を徹底せしメールとともに静粛に作業を実施せしむ如く躾教育に留意すること肝要なりと思う。

 

百瀬 茂

 兵学校を卒業後間もなく荒天に遭遇せるは誠に幸いなり。吾々は陸上に於ける荒天にのみ経験を有するのみにして海上に於いては無経験なり。然る時当直勤務をなせしは得難き体験なるべし。天気図、天候、四界の情況より将来を予知するは海軍兵科将校の常識なり。この時の当直将校の処置等将来に参考となること多し。吾人は兵学校にて基礎を得たるのみにして体験は皆無なり。吾人は須らく白紙となりたる気持にて今より海軍生活を始メール心掛けにて日常の万事諸象に当たり以て兵学校教育にて得たる事柄に肉を添え血を与え以て完全なる知識となし将来のご奉公の完全を期さざるべからず。

 

920

和田恭三

 1 定時より1時間早く起こされ何事かと思えば既に航海当番は配置に着き居り、艦長始め皆艦橋に居られる。台風の中心近づきたる為本艦は大黒神島付近に転錨す。風速最大20米。海上の暴風雨は始めての経験なり。これは天が我らに良き経験を与えられたるなり。良く観察し爾後の勤務の参考となさん。

 2 早暁出港の際、我等には何も視界に入らざるも艦長、航海長等は島を発見され、位置を入れよと言われる。此処にも吾人に訓練の殆ど皆無なるを見る。海上に於ける視力を訓練により大いに発達させる必要を痛感せり。

 

柿崎 實

 1 毎日の失敗が身につく如く感ぜられて愉快なり。殊に白紙になって実習するは自己の力が日々増加するのを目にして観る如く感ぜらる。

 2 事前の研究を充分になさんとするも何を研究すれば可なるや不明なること多し。

 

921

柿崎 實

 1 配置教育にて高角砲操法訓練を行う。兵学校に於ける艦砲教務も未だ頭より全然去らざるか、号令は容易に掛け得たり。

 2 3分隊長の砲術の趨勢に関する講話に於いて簡単にして武人の蛮用に適する兵器最も役に立つものなるの感を深くす。

 

922

西尾 豊

 天測に於いて測角法甚だ不充分にして誤差甚だ大なり。六分儀の取扱法より先ず慣熟するが肝要なり。測角の姿勢も精度に重大なる関係あり。

 

923

出宮喜顕

 1 「候補生にもなって」とは度々言われるも、候補生になれる心地せざるは不可思議なり。未だ眞の自覚と心構えの足らざる証拠か。

 2 積極進取と云い自啓自発と云うも候補生の面に生気溌剌たるを見る事少なきも前者と同様の因ならんか。

 3 現今逼迫せる戦局を外に懇切徹底せる教育を受けつつある吾人の有難さを再認識し当面の本務完遂に万全の努力を払はざるべからず。

 

924

武田晴郎

 1 愈々明日を以って分隊配属変更せらる。此の1週間第3分隊士として何をせしや。殆ど分隊員と接せず終われり。分隊員の居る所に分隊士ありて積極的に分隊の作業に従事せん事を期す。゙

 2 兵科候補生の取り得は元気にあり。然るに僅かなる疲労睡眠不足より消耗せる者を見るは遺憾なり。唯真実一路に頑張るのみ

925

登丸 肇

 注意力の分散と集中

  動転せぬとは物事に留まらぬことに候。例えば1本の木に向かいて其の中の赤き葉1つを見ておれば残りの葉は見えぬなり。葉一つに目をつけずして1本の木に何心も無く打ち向かえ候えば数多くの葉残らず目に見え候。葉一つに心をとられ候えば残りの葉は見えず。一つに心を止めねば百千の葉皆見え候。之を得心したる人は即ち千手千眼の観音にて候。

 

926

鈴木 脩

 常に物事は良く考え明るく考えること肝要なり。不平不満は絶対に言うべからず。不平不満は努力により明るきものと為すべし。いかなる不平不満も己の最善の努力の敵に非ず。

 

百瀬 茂

 1 候補生にして兵員指導の第一は手近なる敬礼にあり。敬礼厳正なる軍隊は軍紀厳正士気旺盛なるを示す。吾人は下士官兵の敬礼を修正する前に答礼を厳正活発に行うを要す。

 2 天測は海上武人の常識なり。常識を眞の常識たらしめんには相当の努力を要するなり。益々努力実行向上に努めんとす。

 

927

出宮喜顕

 乗艦以来、天測には恵まれ計算には稍慣れたる感あるも測角の技倆未だ確実ならざると時計その他測定の各種データーの誤差可なり大なる為正確なる艦位を出し得ず。吾人は自分が航海士にしてこの六分儀この時計にて御奉公するものなりとする旺盛なる自覚を以てこれ等の整備器差測定等に萬遺憾なきを期すべきなり。凡そ如何なる配置に在るとも殊に分隊士として心掛くべきは兵器機関の整備にしてこれ等は下士官兵に専ら任せ自らは之を運用することのみに没頭するは根本的なる誤りなりと感ず。

 

929

出宮喜顕

 本日1900頃水雷艇揚収のため740分迄に揚艇機用意を令せしに準備出来ざりき。その原因を見るに機関科には明日出港の際740分迄揚艇機を用意する如く令せられ居たり。故に機関科にては重複せしものと考えたるに依るなり。640分迄に揚艇機用意、水雷艇を揚げると令すべきなり。

 

930

眞崎三郎  

 連日の睡眠不足。話を聞くと睡眠を催す。熱と意気と頑張りにて貫き通さんとするも暇のあり次第休養すべきなり。無駄話は最も禁物なるべし。

 天測も次第に精度増加し所要時間も次第に少なくなれり。ただし、4本位置を入れれば聊か収拾に困ること多し。本日旗甲板にて天測を行う。主計科候補生1名頻りに首を傾けつつ、腕時計を「デッキウオッチ」に整合し居りたり。小春日和の朗らかなる艦橋の一風景。

 

101

藤井伸之

 1 艦内諸作業に於いて直接指揮号令する機会少なきは遺憾なり。第11水雷戦隊第145作業見学の為龍田に乗艦せる時其の感を強くせり。候補生にしてある程度作業が分れば分隊士等は危険なる時(保安上)のみ注意をする程度にて実習を主とすべきなり。不幸にして本艦は実習する人多きため当直等も廻り難く遺憾なる点あるも充分注意力を働かして常に3人分の仕事をする如き心構えを持たざるべからず。

 2 常に余裕が大切なるを痛感せり。萬事に於いて余裕を有する如く努めざるべからず。集合等においても然り。

 3 注意の仕方が部下統御上極めて大切なり。人格の尊重を忘れるべからず。

 

102

大野嘉秋

 三号の乗艦実習は何も分らず、ただ疲労と空腹と食事と酒保のみを考えて暮したり。

 二号の乗艦実習は少し分りかけたる感ありたるも、疲労、空腹、食事、酒保は忘れず。更に睡眠と縁深かかりき。

一号の乗艦実習は分りかけた艦内生活が又もや不鮮明となり1週間疑問に明け疑問に暮れて終りぬ。

今江田島を巣立ちてより約2旬、漸く艦内生活の大略を知るを得たるも睡眠との縁を絶つを得ず。日々睡魔を憎む。吾人は只今出発したるものにして前途は多難道遠し。常に足元を忘れず、一歩一歩踏みしみて前進また前進せん。

 

103

渡邉 望

 半舷上陸で勇躍艦発、江田島に向かう。江田島は確かに浮世を離れたる別天地の感切なり。然れども一歩校門を入るや既に9時を過ぐるも大掃除中なり。分隊編制替えと一考するもしからず。日課変更による日曜日の大掃除なり。外出は10時半とのこと。同情に堪えざると共に一歩先に出たる為に憂き目に会はざる幸を喜ぶ。土曜日も祭日も無きとは誠に気の毒なり。江田島健児の意気果たして天を貫くものありや不安なり。吾人も後輩に負けざる如く励まざるべからず。

 呉水交社に至る。内容不明。水交社内を田舎者の如くキョロキョロ見廻して歩く者は八雲候補生のみ。然しながら天測だけとは威張ってみたるも淋しきかな。他の艦の者に取り残され遺憾なり。八雲のみ一人伊予灘に四十八節を出撃ラッパが響く。今日も天測、明日も亦。

 

中林正彦

 上陸員を30分も遅らす事は士気に大いに影響す。

 

104

三浦政一

 俗に「候補生は張り切っている」と云われ居れり。無分別に張り切る事あるべからず。

 

105

福島誠二

 灰ヶ峰登山は相当疲労。何等得るところなし。浩然の気を養はんには上陸にしくはなし。

 

戸泉 弘

 灰ヶ峰に登る。大いに浩然の気を養い得たり。疲労を顧みず頂上をきわめ涼風の中に山頂に立ち呉を眼下に見下ろせる時の気を浩然の気と云うに非ずや。

 

田上周男

 呉を眼下に灰ヶ峰に登れば瀬戸内の箱庭実に景色良し。小春日和の山頂に横臥し実に気持良し。日頃の睡魔襲い来る。暫し激務も忘却す。但し、山道の登山行又労多し。浩然の気を養うに最も良き登山なるも登山行最も苦しむ。1300より下山、軍歌を気の向くままに歌い愉快なる心もて1日を送りたり。登山により得たる生気を以て爾後の勤務に邁進せん。

 

106

吉用茂光

 沈没潜水艦救難を行う。甚だ良き経験なり。今後再びかかる事件に際会」することなかるべし。然れども未だ救難作業終わらざるに出港し原因結果等最も大切な事を知らず。面前の美食を奪われたるが如し。甚だ物足らず。出来得ればその後の情報聞かれれば得る所大ならん。

 

107

泉 五郎

 「左舷70700 潜水艦が波没しています。」

 「何!潜航しているのじゃないか」

 「いいえ 濶盾ェ水面に突出しています」

 「そうか! 両舷前進原速黒3」

帝国海軍新鋭艦重巡八雲四十八節にて黒3!

一路西航 遭難潜水艦救助に赴く 針路250度速力50

候補生室の天井は青色に塗りたきもの哉

 曰く「海軍士官は青天井」

 

108

福岡利之

 候補生マスト登り方用意・登れ 戦友の声はマスト内に消えて行く。トップも近くなり光明の世界に近づきし瞬時、戦友の声ははたと止りぬ。余不思議に思いつつ明るみに顔を出せばそれも其の筈、砲術長厳として存立す。

暫時にして我等の後方より来たれる一将校あり。曰く「其処でぼやぼや何をしとるか」戦友誰一人答える者なし。砲術長野顔もいように輝けり。

 

1010

高原哲夫

 「航海士」

 「うん」

 「之が〇〇 之がRigel 之がSiriusの位置の線、この三角形・・」

ふと横を見るとコックリコックリ漕ぎだしていたり。突然現れたる通信士、腹を抱えて大笑い ×コシ×一向に気づかず。

 通信士曰く「起こすな、写真を撮るから」と余こみ上げるおかしさを呑みこみ一段声高に「この三角形の内心をとりこの位置を決めました。」されど一向に反応なし。余暫し躊躇せしも勇を起こし退きたり。忙しき航海士余の好む所なり。

 

巻 石蔵

秋のくれ さびしき雲の 影みせて

      戦友の悲しく ゆきにけり

 

1024

岡田 清

 艦長帰艦の内火艇の艇指揮空浮標群を斜めにまっしぐら、オット危ない。左舷浮標にすれすれ、取舵の所」  「宜候」 「前にブイがあります。」 頭にピンとこない。「取舵」 「危ない」 「戻せ」 「面舵一杯」 「ドカン」

 茶話会にて指導官のお言葉「貴様もう少し確りぶっつけて艦長に鼻水たらさせたら俺が褒めてやったのになあ」

 

1028

巻 石蔵

 小春日和の瀬戸内に重巡あり。

「あの煙突は何故1本にしてあるか知っているか。」  「?」  「分んないの?」

「室内の面積を広くしてあるんだょ・・・」  「?」  「ね、ね、ね、そうじゃないかね」  黙して答えず。  「な、そうだろう 巻候補生」  

已むを得ず「は はい」(内心テヘッ)

 

1110

新井田康平

 1 行脚の問題

   「八雲の左舷梯に着ける」  「舷梯宜候」  「舷梯ではない。それより一寸前の所だ」  「行脚!」  「チンチン」  「チン」  ガシャン ガシャン  

馬鹿  ポカン

 指導官講評「貴様達の達着は行脚が大きい。もう少し小さくせよ。勉強にはあの行脚で行け 終り」

 思うに行脚の無い人間は駄目である。此の一言を忘れまい。

 2 叱られた時の態度  「馬鹿ッ!」  「はい」

 

藤野龍彌

 凡そ俺ほど鈍い者は世にあるまい。天測の計算は何時もビリに近かったし、短艇達着では特別講習をやって貰った。ところで本日航海中の当直将校に立ち操艦をさせて貰ったのだが、遂に第1回目の変針にては面舵と取舵とを間違えてしまった。2回目の変針では変針点が過ぎてしまったのをまだ変針点に来ていにものと思い込み「コンパス」にかじりついていた。而も令した舵又もや反対だった。

 

S・I  

 無題

 〇 砲術長

  「主任指導官 私は月足らずでしたが今ではこんなに大きくなりました。」

  「そうか。これは私の私見だがね、禁酒禁煙で酒保さえ食って居れば大きくなるよね。そうだろ。〇〇候補生」

 〇 航海長

  「航海長 操舵員代わります。丸く禿げた山宜候」

 〇 運用長

  伝令中尾一水「ジュワジュワ出ない。ダマシダマシ出ない。」

  「オーイ 艦橋 今ゆさぶって居る。」

  「モット」ドンドン ゆさぶれ。」

 〇 3分隊長

  「色眼鏡はだね、相手から見えなくて自分で見えるから・・・」

  「それにしては色が少し濃い様ですね。」

  「馬鹿言え。総て戦闘即応じゃ」

  何と又塩気多すぎた?

  哨戒長付

   「夜食用意が出来ましたから夜食をとらせます」 「哨戒長」 「副長」

  哨戒長

   「はい」  

  副長  ?

   少佐2

   「なんで何をとどけるんだ」  「お前は誰か」

   懐中電灯で照らす  哨戒長付?

 

 K

 下士官兵は純心なるも無知に非ず。茲に指導の難点ありき。今にして思えば如何に純にして聖なる兵学校生活なりしか、この聖なる精神あればこそ部下は唯々諾々と我等の命令一下水火も辞せざるなるべし。

 大同団結白き者も黒き者も丸も四角も三角も一つ目的のもと挺身し得る。現実を見よ。一切の私怨無く私憤無く上下正に混然一体る境地。かくありてこそ、海軍は無敵なるなり。今後如何に海軍は膨張するもこの団結力は決して失うべからず。而して第72期

はその間にありて最も強き一環たる事を疑わず。南方に、北方に南萬里を隔つとも或いはt幽明境を異にすることあるも強固なる我等の精神の交流は永遠変わること無かるべし。さらば、諸君健在なれ。

 

S候補生

 高松、別府、大三島と上陸は楽しきものなり。海上生活を為すもののみ知る楽しさ。然し乍ら呉に於ける上陸程憂きももはなし。折目のついた軍服に帽子の恰好を気にしながら颯爽と上陸せしも生憎と水交社以外休む所もなし。それも高等官9等では肩身も狭い。昼飯にもありつけず、街の塵を浴び乍らうろつき廻る悲しさ。颯爽たるジャケット姿の底に流れる淡い感傷。夕日燦たる西空を仰ぎて一キャデットの歌に曰く。

 ◎ 幾山河越え 去り行かば 空き腹の

      ふくるる時ぞ 雨もさまよう

 

來島照彦

 雨の後は晴 遅かれ早かれ

 文句を言いたくば己に云え。他に対して不平を鳴らす勿れ。

 形式に流れるは官吏の通弊、吾人宜しく実情に即する指導を為さざるべからず。

 

飯田嘉郎

 113日夜  私室で既に意識不明   例の調子で

「ふぇーか 俺の言わんとする所はだね七生報国だ それだけだ」

口を拭って「ペー・・マタハーリノツンダラカムシヤマヨー」チン チン チン チン 

ペコンとオジギをして「定期15分前になりました。」艦内廻れ

ギンのツバサに チリテンツルシャンヒノーマール ソメテー ギョライダイテ 5千キロ マタハーリノツンダラカムシャマヨー

 アアトンデ チリテンツルシャン 

ユクカョー サンゴーーーカイ  人はみかけによらぬもの

 

西 金蔵

 明治の佳節 短艇操縦あり。

補佐官上機嫌にて曰く「行脚のなき者は叩き落とすぞ」と。

行脚過大宜しい 舷梯に衝突する宜しい 要するに艦の元気は候補生にあり。

 

T・D候補生

 「グ グ グ・・・ウム 長久飴はネーカ・・・」

「候補生天測起こし! 候補生起こし!」

「ヨーイ テー」  「ヨーイ テー」  辛苦1時間半或いは2時間、3時間・・

「コーカイシ・・」  ×コシ×「スー スー スー  グー グー」

「コーカイシ」「あのポラリスとシリウスと金星とを測りました。決定位置は此処になります」

×コシ× 「ヨシカカレ」

×ホシ× 「ネー 分隊長そうでしょう」

×ホ×  「何がや」「貴様等よく聞いておけ、俺が貴様等に教える事唯一つあるよ。見とれ」「ギュー・・・(酒を吸い込む音)

モグラ上人酒を飲む。

月海に落ちる。柱島海、巡検終了後 ×カンパン×「エト 何か質問はないか。」

 長浜港「チャージ」

×ツシ× 「皆ネ チャージに行く時は必ず風呂敷と金を忘れぬ様にネ」

“白頭山節”“別府湯の町”・・・ 思い出深き愉快極まる八雲「ガンルーム」 「ケップガン」 終生心より離れざらん。

 

これからは随想録として書かれている。

武井敏薦 

 寄港地話

  今日も×コシ×の昼寝かな

  海図室 航海士どもの夢の跡

  誰のこつじゃこん歌は

  こりゃなんなんじゃ さっぱりわからんわい

  貴様等はどもならん

 

八渕龍二

 若い者は意気と熱と行脚。然し短艇の行脚過大は禁物ですぞ。

「上陸止発生」てな事になるから。

 

青木孝太

 1 柱島  今日も内海の主となり。

 2 高等官の候補生

   諸例則に首を突っ込み乍ら酒保を食い。

 

松下太郎

 針路240度 快速を誇る軍艦〇〇 海上を〇〇に向け航海中 当直将校〇〇大尉 迷操舵員〇〇候補生 外は秋晴れ 操舵室には風も入らずポカポカと暖かい。両舷の通信器当番申し合せた如くコクリコクリ 速力は原速四十八節を指している。うねり一つない鏡の如き海上

 (艦橋)「取舵にふらすな!」  「取舵にふらすな!」

   はっとして抗舵を取る。5度 10度 まだ振る  ドンドン振る

 (艦橋)「どうしたか」

   しもうた!

   「舵を反対にとりました。」

 艦橋より声なし。八雲は重い濶盾フ振りを止めて静かに振り直し始めた。

はっとして目覚めた兵も再び秋晴の暖かさに無我の境地に入りかけいる。

鴎がさっと濶盾横切る。陸地も近いな。

 

落胆

 某日短艇訓練あり。行脚過大なるもの、失敗せるもの上甲板一周。我全力を出し2着たりしに、我を待ち居たりし言葉次の如し。

 曰く「汝短絡せるに非ずや」と。落胆思うべし。今にして思えば微笑無きにしは非ざれど。

 

I候補生

 旗流信号教練について 手旗信号

「コシケンザイナリヤ」

「タダイマカイヅシツニテイネムリチュウ」

「マダサメズヤ」

「ハナカラチョウチン」

 一期の候補生は居眠りすべからずと言うは誰ぞ。 何はともあれ微笑ましき小春日和の一時よ。

 

Y・K候補生

 ある晩の一風景

 四苦八苦とは少し大袈裟だが一生懸命計算した天測を終って行ってみるとこれ如何に。八雲停泊士は白河夜船の真っ最中。その光景たるや口からはたらたらと涎を流し、おまけに鼻提灯。 みっともないことおびただしいが、まさに天下太平と言ったところ。「航海士」

「ウンウ・・・ン」アアまたその儘轟沈 よくよく考えてみるとそこが碇泊士の碇泊士たるところ、天測に夢中になるようでは碇泊士の職務に忠実であるとはちょっと威張れませんからね。ああそれなのに、世の中は何と皮肉に出来ているんでしょう。そのお方は候補生が英気を養っていると起こしたくなる困った性分のお方でした。

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