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自習室の大掃除

毎土曜日の午後大掃除がある。各分隊、受持の短艇から便所迄やるのだが、主たる場所は自習室と寝室である。そのハイライトは自習室のワックス磨き、寝室は水拭きの甲板(床)磨きである。長さ30〜40糎、直径10糎位のロープをほどいた「掃布」の束を握りしめ、四号は床をはい回って一週間の汚れをとる。

「ソーフ用意」 「廻れ!」で、エネルギーロスこれにまさるものなしといった力を込めて床を磨くのだが、隅から隅に行きつくと一号の室直長からまた「廻れ!」の号令がかかって廻れ右して、またゴシゴシ。掃除というより足腰と精神力を鍛える訓練である。床はワックスと四号の汗で磨かれる。三号以上ともなれは呑気に硝子窓を磨いていればよい。「キッイナ7、中学の同級生は今頃高等学校でノンビリと」等と考えている間は序の口で、本当にへバッタ時は、つらいと考える思考力を超えて、ただ眼前の床をこする事のみに全精力を打ち込む。やがて体でその要領をマスターする。これは短艇とう漕等、何の訓練にも通用する。

概して大男総身に何とか廻りかねで、大柄な奴は要領を覚えるのに暇がかかる。漫画右端の生徒は腰高となり力も入らず、腕の握力もなくなり、すぐへバッテしまう。左端のチビは理想的なソーフスタイル、中央はへバッテいるクラスを心配して横眼で眺め乍ら自分自身もややグロッキー気味、三者三様の四号スタイル、鬼の一号は何回も「廻れ!」をかける。今日は××一号生徒が室直長だから、「廻れ」の数がこのくらいと想像がつく様になる頃は力も腰も敢闘精神も入った四号生徒ができ上る。

「ソーフ止メ1」の号令がかかると、大掃除の山は過ぎ、大掃除終了後の点検中、生徒館前で銃器手入れ、済んで名物の棒倒しが終れば、生徒さんの思考力の80%は巡航か、日曜の外出に占められ、生徒館もウキウキしてくる仕組になっている。

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