加藤孝二君への弔辞
森田 禎介
海軍航空隊の戦友を代表して、謹んで親愛なる加藤孝二君のご霊前にお別れの言葉を申し上げます。
加藤さん、あなたは実に立派な男の中の男でありました。あの苛烈な戦争の真只中では日本海軍の精鋭偵察第三飛行隊の中堅士官として、元気一杯全隊員の先頭に立って率先垂範されました。あなたは明朗にして闊達、正義感とユーモアにあふれた積極的な行動力は、全隊員の深く信頼するところでありました。
昭和十九年秋、わが隊は南九州の基地を飛び立ち、沖縄、台湾、そしてフィリピンヘと勇躍進出致しましたが、戦局はすでに大きく傾き、悪戦苦闘のなかで多くの前途有為の若者を失いましたことは、まことに痛恨の極みでありました。
戦後生き永らえたあなたは、生きることに精一杯だったあの時代に散華された戦友とクラスメートの方々の慰霊、ならぴにそのご両親の弔問に誠心誠意尽力されました。あなたのひたむきな姿とその真心にわれわれは深い感銘を受けた次第であります。
加藤さん、あなたは私にとってかけがえのない大切な人でありました。あなたとの戦中戦後六十年に及ぶ交友はなにものにも替え難い尊い珠玉のようなものであったと思います。
加藤さん有難う。あなたの七十七年のいかにも江田島健児らしい立派な堂々たる生涯に心から敬意を表するものであります。
最後にあなたが片時と忘れることがなかった、わが隊で若くして戦死された貴七十二期諸勇士のなつかしいお名前を是非読み上げさせて下さい。
海軍大尉 川端博和君 水野英明君 江口正一君
金原 薫君 土星 睦君
謹んでご冥福をお祈り致します。