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旅立ち

加藤 好子

人の別れ、誰しも通る道とは常々思って居りましたが、本当に悲しくつらいものでございます。

十月七日、七十七年の人生を終え、主人は旅立ってしまいました。なにわ会名簿そしてなにわ会ニュースを両手にかかえながら嬉しそうに去って行く後姿が見える様でございました。しばらくお別れして居りました多くの方々にあの笑顔でお話をしに参ったのでございましょう。

 最後迄意識がはっきり致して居りました。

精一杯生き抜いて参りました主人、主治医の先生にしっかりと手をとられ、お別れする瞬間に大きな目を開きました。夢中で私が顔を近づけましたが、先生の方を見て、「これでおしまいですか?色々お世話になりました・・・」と、語っている様な目でございました。

どうぞ皆々様、くれぐれも御自愛下さいまして、大切な日々を御過ごし下さいます様、心よりお祈り申しあげて居ります。又、楽しく人生を過ごさせて戴きました事、主人に代わりまして深く深く感謝申し上げます。

 フト、主人がかけて帰り、気ぜわしく、

「オイー・−・オソバオソバ」と子供の様に申していましたあの顔、姿が目に浮かんで参ります。

 思い出、それは今を生きるための心の糧

 思い出、それは世を去った愛する者からの水遠の贈り物

 主治医の大淵先生より戴いたお言葉です。

 

(なにわ会ニュース84号9頁 平成13年3月掲載)

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