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昭和２７年１１月寄稿

第一回慰霊祭経過報告

澤本　倫生

　秋、あたかも、��國神社の例大祭を1週間後に控えた十月十二日、我々が終戦以来常に念頭におきながら果せなかった、戦没期友の合同慰霊祭が厳かに取り行われた。この日、早朝七時から遠くは四国・九州、或は青森から遺族の方方や生存期友は続々と��國の社頭に集り、それぞれ胸に名入りのリボンをつけ祭礼の始まりを待った。

　定刻を少し遅れて十時半、一同拝殿に昇り、後ろに引きも切らぬ一般参詣者の拍手を聞き乍ら永代神楽を奉納した。終って神主よりお祓いを受け、心身を清めて本殿に参上、祭礼の席に着いた。

　祭礼は神主の祝詞に始まり、代表樋口　直の祭文奉読の頃は一同一切の邪念を去り、思いを過去に馳せ、故人を偲び、更に英霊と交談する境地に至った。特に樋口君の祭文は或は英霊に訴え、或は遺族を慰め、或は期友を戒め、切々我々の胸中を吐露して巳まず。遺族の間にも、期友の問にも、感極まってしのび泣く声か漏れた。天もかつて鬼神を哭（な）かしめる忠勇に散華した英霊を思い、ここに参会する一同の胸中を察してか、この間中静かに雨を降らしめていた。かくて、遺族期友並に来賓代表の玉串奉奠を以て式を終り、一分間の黙祷を捧げて一同は退場したのであった。

　其の後、社頭で記念撮影を行い、ハイヤー四十台を連ねて会場駿河台ホテルに至った。　ここでは、遺族に対し「なには」会の歴史と現状について松元金一君、伊藤孝一君の説明があり、昼食を共にして故人をしのんでの話題に時の経つのも忘れた。食後来賓として、御多忙の中を御出席下さった草鹿元校長より「若い者が実に良くやってくれた。」と御言葉があり、遺族の方々より「今迄の如何なる慰霊祭より期友の手によるこの慰霊祭が一番嬉しく、本日程愉快な日はなかった」という御感想が述べられた。最後に室を片附け、遺族も期友も艦船関係と航空関係とに別れ、更に数々の思い出にふけり午後四時予定通り有意義な第一日の行事を無事終った。

　この目出席された遺族は全部で百九十名の多きに達し、また、草鹿元校長を始め森・石田・石隈・柳田の諸教官も御多用中御列席下さった事は主催者として全く感謝にたえない。
以上誠に拙い文章であるが、地方に居られて参列出来なかった方々の為に当日の模様をお伝えし、此の日の意義を更に深めたいものと思い、執筆した次第である。

第一回慰霊祭経過報告（追加）

　（澤本の報告と重複するところを除く）

飯沢　　治

　松元金−兄より挨拶、伊藤孝一兄より終戦時以来期会の経過の説明あり、彼の第一回慰霊祭開催に至る迄の我々生存者一同の気特の説明は一言一句誠心溢れ、遺族の方々も感激せられ、我々一同も心の温まる思いであった。

　遺族の中からは立って感謝の意を述べられる方々も多々あり、特に田中つとむ兄の厳父は彼が戦死直前両親に書き送った遺書を涙と共に朗読、在席諸氏も共に感泣した。

　草鹿氏も挨拶を述べられ、森教官からは諧謔を交える懐古談あり、一同の緊張も之によってほぐれ、会食歓談の中に時の過ぎるのも忘れ、生存者一同は父兄に亡き期友の面影、戦死当時の模様等を語り、名残尽きぬままに午後五時過ぎ散会、地方より上京せられた遺族の中二十六名と幹事四名が同ホテルに一泊した。

　翌十三日は主として地方より上京せられた遺族を案内、大型バス二台で都内見学、皇居内拝観、終って渋谷信也兄の店（銀座梅林）にて休憩の後、午後四時より歌舞伎座にて歌舞伎見物、午後九時半終了、大半の遺族は同夜帰郷せられ、ここに無事今回の行事を終了する事ができた。

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